

熱帯地域に属すフィリピンでは、トウモロコシ生産を主な収入源とする農業生産者は、全体の3分の1を占めています。しかし、アワノメイガの大量発生により、作物の収量が4分の1以上減少してしまうこともあり、高価な殺虫剤を散布して、これを防除しなければなりません。13人の子供の父親でもある農業生産者、Seferino Cosme氏は、従来の方法で農業を行っていた時の畑では、2.5エーカー(1ヘクタール)あたりの収量がたった3トンであり、このため「収入はごくわずかでした」と振り返っています。
しかし2003年に害虫抵抗性の遺伝子組み換えトウモロコシの栽培を始めてから、Cosme氏や仲間の農業生産者のトウモロコシ収量は以前の2倍以上に増え、さらに農薬散布のコストも減少しました。アワノメイガの被害は大幅に減少し[1]、茎や穂が腐ってしまう被害も減りました[2]。Cosme氏は、「遺伝子組み換えトウモロコシの採用が鍵です」と述べた上で、次のように明かしました。「遺伝子組み換えトウモロコシの栽培を始めてから、私たち家族は経済的にゆとりが持てるようになり、それに伴い、生活も豊かになりました」。
従来の非遺伝子組み換え品種と遺伝子組み換えトウモロコシの栽培結果に関する2006年9月の研究がThe Philippine Agricultural Scientist(フィリピン農業科学)誌に発表され、それによると遺伝子組み換えトウモロコシの方が収量が37%高く、2.5エーカー(1ヘクタール)あたり225米ドルの収入増になることが明らかになりました[3]。また収入増加分の約半分強は、農薬コストの削減によって改善したものでした[4]。
2003年以後、フィリピンでは50万エーカー(20万ヘクタール)以上の畑で遺伝子組み換え種子が作付けされており、新品種も上市されていく予定です。遺伝子組み換え作物により農業生産者にもたらされたプラス効果は重大です。30エーカー(12ヘクタール)の土地で5人の子供と一緒にトウモロコシとコメを栽培しているJesus Gavino氏は、「農業収入が増えたので子供たちを学校に通わせることができるようになっただけでなく、生活水準全般が向上しました」と述べています。
[1] Economic Impact of Bt Corn in the Philippines(フィリピンにおける遺伝子組み換えトウモロコシの経済効果), Jose M. Yorobe Jr. and Cesar B. Quicoy, The Philippine Agricultural Scientist(フィリピン農業科学), volume 89, No. 3, pages 258-267.
[2] Reduced Incidence of Bacterial Rot on Transgenic Insect-Resistant Maize in the Philippines(フィリピンにおける害虫抵抗性の遺伝子組み換えトウモロコシにみられる倒状細菌病発生の低下) Samuel C. Dalmacio and Tomas R. Lugod, Plant Disease, September 2007, volume 91, No. 4, pages 346-351.
[3] 1米ドルは45フィリピンペソと換算。
[4] Economic Impact of Bt Corn in the Philippines (フィリピンにおける遺伝子組み換えトウモロコシの経済効果)他