生産性の向上
農業生産者が伸びゆく世界のニーズを満たせるよう支援します
モンサント・カンパニーによる展望
2008年5月
農業において、持続可能性とはどのように捉えられているのでしょうか。「Sustainability:持続可能性」という用語は、1987年に環境と開発に関する世界委員会(World Commission on the Environment and Development)がまとめた「地球の未来を守るために(Our Common Future)」と題する報告書に初めて登場し、それ以後一般に使用されるようになりました
1。この報告書によると、持続可能な開発とは「次世代の人びとのニーズを満たすための力を失わせることなく、現在のニーズを満たすために行う開発」であると示されています。これは合理的なな計画のように思えますが、最近のニュースではその成果を疑問視しています。
モンサント・カンパニーの社員Atila Deakがイリノイ州で撮影した写真
過去8年間の内7年において、毎年の生産量を上回る穀物が世界で消費されました。その間、穀物の在庫水準は史上最低のレベルに低下し、過去数十年で初めてとなる食糧価格の激しい高騰を招きました。エネルギー価格はこの5年間で4倍に上昇し、原油価格も史上最高値を記録しました
2。地球温暖化に対する懸念も広がっており、史上最も温暖であった8年は、全てここ10年の間に起こっていると専門家も指摘しています。こうした経済および気象変化の影響は現在、HIV/AIDSに関連した世界規模の健康危機とともに、サハラ砂漠以南のアフリカを襲っています。このため、同地域の平均寿命は1980年代後半よりも短くなっています
3。
これらの課題は農業に対し、そして農業は持続可能性に関心をもつ人びとに対し、どのような問題提起をしているのでしょうか?近年、モンサント・カンパニーの経営陣がこの問題について農業生産者、政策立案者、研究者、NGO、さらに産学から招いた専門家と検討することが増えています。これまでの検討結果は下記の通りです。
十億人の農業生産者の生活改善を推進
「飢えているのはどういう人たちでしょうか」。ISAAA(The International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications国際アグリバイオ事業団)9会長のClive James 博士はこう問いかけ、「飢えている人々のうちの50%は資源が不足している零細農業生産者で、他の20%は土地を所有せず、農業に生計を頼っている人びとだ」と説明しています。現在、農業生産者は世界全体で13億人いると推定され、依然として現在の雇用のほぼ半分を占めています。農業生産性を向上させることが資源に恵まれない農業生産者の生活改善を推進し、飢餓と貧困を減らすための戦略において中心となる緊急の課題であることに、世界中の専門家が賛同しています。「この地球上で、過去にあったひどい貧困状態を克服し現在は発展を遂げた、もしくは発展を成し遂げつつある地域では、必ずといっていいほど農業革命を経験していることが分ります。また、その初期段階において、1ヘクタールあたりの食糧の生産性が、大幅に増加しています。10」。コロンビア大学地球研究所所長Dr. Jeffrey Sachsは、このように指摘しています。
世界中の資本が植物バイオマスから得られる再生可能な輸送燃料の開発に注目したため、数年という短い期間にエネルギー価格が急上昇し、結果としてこれまでとは異なる新しい傾向の開発が始まりました。欧州と米国では、海外から輸入される石油資源への依存度を弱め、温室効果ガスの排出を削減し、農村経済における再生可能燃料製造への投資を進める政策に対して、政治的な支持が結集されてきました。。現在、米国では需要を満たすため1日に14億ドルの原油を海外から輸入していますが、2030年までにその輸入量は、必要量の70%に達すると推測されています11。国際エネルギー機関は、世界のエネルギー需要は2030年までに55%増加し、そのうち74%は発展途上国の経済圏において増加すると予想しています12。中国やインドのような大規模な新興国が競ってエネルギーを奪いあうようになる中で、先進工業国とその政治指導者たちは、率先して新たな解決策を模索しています。
農村の弱体化を経験してきた農業生産者は、投資が増えることにより、将来農場の近くに雇用機会が増えることを期待しています。米国では、現在稼動している、もしくは建設中のエタノールなど再生可能燃料の生産設備によって、2007年の1年間で23万8,000人の雇用と、およそ34億ドルの地方税収が生じました13。消費者も同様に恩恵を享受しています。農業農村開発センター(Center for Agriculture and Rural Development)の農業経済学者の最近の試算によると、エタノール燃料が利用できるようになった影響がガソリン価格に及び、このため米国の消費者はガソリン1ガロン(約3.7リットル)あたり0.29〜0.40ドルの節約をしています14。
食品の価格は過去数年間話題に上ることがありませんでしたが、ここにきて改めて重要な問題になっています。米国農務省のJoseph Glauber首席エコノミストは最近議会での証言の中で、(1) 世界経済の発展が発展途上国における高たんぱく質食品、多様性に富んだ食事の需要を増加させていること、(2) オーストラリアにおける数年越しの干ばつなど、いくつかの重要な穀物生産国で天候不良が発生していること、(3)いくつかの重要な穀物輸出国が、穀物の輸出規制政策をとっていること、(4)農業生産現場と食品チェーンの間の輸送に必要なエネルギー価格が顕著に高騰していること、(5)現在の食糧価格上昇の一因となった、再生可能燃料向けの需要が出現したことについて指摘しました15。農業生産者たちは、農産物の対価として受け取る金額が増えた一方で、その大半が農業生産資材のコストについて懸念しています。石油エネルギーに依存する化学肥料などの農業生産資材価格は、2000年から228%上昇しました16。畜産業生産者については、肉、牛乳、卵の需要の急激な拡大による恩恵を享受しているものの、穀物およびエネルギー価格上昇の深刻な影響も受けています。
世界中の農業生産者は、コスト競争力があるたんぱく質、油、繊維供給源を提供し、畜産業界のニーズを満たそうとしています。彼らは自分たちの子供を養うとともに、多様性に富んだ食事を求める発展途上国へ、十分に食糧を供給したいと願っています。さらに、安定したエネルギー供給のため再生可能な燃料に期待する人たちに、解決方法を提供したいとも望んでいます。
それでは、誰が彼ら農業生産者を支援できるのでしょうか。
次世代のために環境を保護し改善する
農業に対する需要が拡大する中、人類の活動と、それが自然環境に与える影響への懸念は、最高潮に達しようとしています。国連環境プログラム(UNEP)は1999年、50カ国200人にも及ぶ研究者が、水不足と地球温暖化の2点が、来るべき次の世紀に向けて最も難しい問題であると認識している事を報告しました17。農業は、人類にとって唯一最も優れた自然環境との相互活動です。そして水不足も地球温暖化も、旧態依然の農業のあり方に対し農業に関係するすべての人に課題を提起していると言えます。世界の食糧供給のうち約40%は、世界の農地のうちたった18%の、灌漑された農地から供給されています。増大する食糧需要を満たすために、1950年に1億ヘクタール未満だった灌漑農地は2005年には2億7,000万ヘクタール以上に増加しました。より多くの水を利用可能にし、それを穀物に供給することは、「緑の革命」において不可欠かつ生産力の向上に有効な手段でした。現在、農業用水は世界中の淡水の取水量全体の70%を占め、特定の地域では90%にも及んでいます。18。世界水会議では、このままで行くと2020年には、世界中の人を養うため、現在利用可能な水量よりも17%多い水資源が必要になるだろうと提言しています。。世界の水の利用量や利用率については、穀物の貿易数量から、乾燥地帯における水利用を計算する、「バーチャル・ウォーター(仮想水)」という考え方を用いて、長い間研究されてきました。例えば、北米および中東地域に1年間で輸入される穀物を生産するのに必要な水は、ナイル川の年間流量にほぼ匹敵します19。
現在、および将来の農業生産における、水利用の可能性は、地球の温暖化に伴って適応を迫られることが予想される条件によって制約を受けることになります。。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、サハラ砂漠以南のアフリカが最も急激な影響を受けると予想されています。7,500万人から2億5,000万人が水資源の問題にさらされ、作物の収量は2020年までに50%減少すると見込まれています20。アジアや北米では、灌漑や作物生産に利用されている大きな河川の流域が減少することも予想されます。これにより、既存の水資源に対する獲得競争は激化し、世界の全ての地域において、作物を栽培する生産者や畜産業生産者に、新たなレベルの問題を生み出すでしょう21。
2007年のIPCC概略報告書によれば、農業によって発生する地球温室効果ガスは排出量全体の13.5%を占めていますが、その他にもCO
2換算で17%は、森林伐採および土地利用の変化によることが示唆されています22。「統計データから分かるように、行われている森林伐採全体のおよそ70〜80%は、伐採をする人々がまさに、彼らの生存のために行っているのです」。世界食糧賞受賞者のPer Pinstrup-Anderson博士はこう指摘し、次のように補足しています23。「彼らは、食糧その他の農業製品を生産するための土地を確保するために木を伐採しているのです」。世界で1日に消失している森林の面積は現在、パリ市の2倍に相当する2万ヘクタールに達します24。
「環境資源にこれ以上負荷ををかけずに、増大する一方の食糧および繊維の需要を満たそうとするならば、土地の利用効率を継続的に改善することが不可欠」と述べるのは、世界自然保護基金のJason Clay博士です。世界の農地は既に、農業に適した土地のほぼ全てに及んでいます。一方で、2030年の1人当たりの穀物作付面積はわずか0.08ヘクタールで、1950年の3分の1に留まると予想されています25。人類がこれまで全面的に依存してきた生態系である農地の表土は、その40%に深刻な劣化が広がっています。農地の表土は再生可能ですが、肥沃な表土を2.5cm作り出すのに200〜1000年はかかります26。「土壌侵食はあらゆる国にとっての敵です。はっきり目にみえないだけに、国外から侵略し征服するどんな敵よりもはるかに悪質です」。受賞歴のある土壌学者のHarold R. Watson博士はこう指摘し、「それはゆっくりと忍び寄り、すぐに土地を占領する敵」であると付け加えています。
では、私たちはこうした状況のなかでに対し、どのような役割を果たせるでしょうか。
難問に対処する
農業が直面している課題は、実は人類全体が直面している課題です。農業を持続可能なものにするべく、十分な食糧、繊維、エネルギーを66億人に提供するという現在のニーズを、まずは満たさなければなりません。実際のところ、これはまだ達成されていません。そして私たちの次の世代の時代になった頃には、90億人以上のニーズを満たしていなければなりません。そのほとんどの人たちはより豊かよで多様性に富んだ食料を求めるでしょう。
ただし90億人のニーズを満たす一方で、農業がたった1つしかない環境に害をを与えてしまうようであればとうてい持続可能とはなり得ないでしょう。このような事態を起こしてはなりません。農業が持続可能であるために、次世代の子孫達が、その時代に生じた難問に対処することができるように、われわれは環境を保護し、そして改善する必要があります。
持続可能な農業に関して、多くの人が助言や政策を提示していますが、大地の上でそれを実現させるのは農業生産者です。先進工業国の大規模農業生産者は、食糧およびエネルギーを手頃な価格で提供できるようておく十分な生産量を確保しなければなりません。発展途上国の小規模生産者は、家族を養い、そして貧困と飢餓の悪循環を断ち切るために、農業によって得られる収入を増やす必要があります。その過程において、仮に10億人ほどの農業生産者の生活改善の機会が損なわれるようなことがあれば、農業は間違いなく持続可能なものとは見なされないでしょう。
以下に上げる3つの課題に個別に対処するだけでは十分とは言えませんが、農業が持続可能であるためには、(1)全員のニーズを満たしながら、(2)環境を保護、むしろ改善し、 (3)10億人の農業生産者の生活改善の向上の機会を提供する、という3つのことを実行する必要があります。この3点は全てが必須事項であって、どれかを選択できる、といったものではありません。
農業にはこれまでにも、数々の技術革新や、より良い遺伝子の活用、そして確かな情報に基づいた農業活動を展開する事によって、劇的にその生産性を改善を実現してきた歴史があります。今日、モンサント・カンパニーは農作物研究における世界的なリーダーとして、トウモロコシ、油糧作物、野菜など作物の改良に年間およそ10億ドルを投じています。モンサントはこれまでも外部の知識や知恵を探索してきましたし、今後も、これらの問題に関する対話を引き続き促進します。そのなかで弊社の強みと能力を出し切ることができるように考えてまいりました。また、農業における持続可能性という課題を検討するにあたり、同じ課題に対処しようとする他の人達とも協力する用意があります。これらの課題はとても重要であり、対応するためには、多くの人が考えるよりもはるかに多くのことを、弊社を含めこの課題に関心をもった私たちすべてが実行する必要があります。
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