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遺伝子組み換え作物の基礎知識
4.遺伝子組み換え作物の安全性評価
① 国際的な安全性評価
遺伝子組み換え作物の食品としての安全性については、国際的な基準に基づいて評価されています。OECD(経済協力開発機構)で合意された「実質的同等性」という共通概念を前提に、2003年には食品の国際際規格を定めるコーデックス委員会(FAO/WHO合同国際食品規格委員会)で安全性評価の国際基準が策定され、これに基づいて各国が審査を行っています。
また環境に対する影響については、2003年には生物多様性条約に基づき、遺伝子組み換え生物の環境放出に関する規制としてカルタヘナ議定書が発効され、各国がこれに基づいた安全性評価を行っています。
② 日本での安全性評価
日本での遺伝子組み換え作物の安全性評価は、食品、飼料としての安全性、および環境中での安全性評価が行われています。
食品については厚生労働省が食品衛生法に基づいて、また飼料については農林水産省が飼料安全法に基づいてそれぞれ評価してきました。2003年に食品のリスク評価を専門に行う独立組織として内閣府に食品安全委員会が新たに設置され、これにより、食品については食品安全委員会が審査を行い、その結果を受けて厚生労働省が認可するという仕組みに変更されました。なお飼料についても、飼料の家畜に対する安全性については引き続き農林水産省が評価を行いますが、飼料を摂取した家畜から得られる畜産物を人間が摂取した場合の安全性については、食品安全委員会が審査した上で農林水産省が認可することになりました。
一方、作物を栽培する際の環境影響評価については、かつては農林水産省が「農林水産分野などにおける組換え体の利用のための指針」に基づいて評価していましたが、カルタヘナ議定書の国内担保法として「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(通称:カルタヘナ法)が2004年2月に発効したことにより、同法に基づいた環境影響評価が行われるようになりました。カルタヘナ法の下では、閉鎖系での使用(第二種使用:実験室、特定網室など、環境中への拡散を防止しつつ栽培を行う場合)、開放系での使用(第一種使用:野外栽培や海外からの輸入など、環境中への拡散を防止しないで行う場合)など、遺伝子組み換え作物の利用目的、開発状況に応じて段階的な評価が求められ、我が国の生物多様性を損なう恐れがないよう、第二種使用については文部科学省と環境省、第一種使用については農林水産省と環境省が共同で評価、監督を行っています。
以上のように、遺伝子組み換え技術の実用化に当たっては、目的ごとに安全性審査の法律が異なります。それぞれについて、詳細をみていきましょう。
③ 安全性評価の内容
〈食品としての安全性審査について〉
食品として使用する場合の安全性は、食品衛生法に基づき厚生労働省が定めた「食品、添加物等の規格基準」および食品安全委員会が定めた「食品安全基本法」に従って、厚生労働大臣と食品安全委員会が安全性を評価し、承認を行います。
食品としての安全性評価の内容は、導入した遺伝子や、遺伝子を導入することによる変化などを確認します。遺伝子組み換え食品が従来の食品と同等の安全性が確保されているか(実質的同等性)がポイントとなります。まず、遺伝子を導入したもとの作物の食経験はどうか、それに組み込む遺伝子は安全か、目的以外のタンパク質はできていないか、新たに毒性を示すことはないか、アレルギー誘発性が高まっていないかどうか、栄養成分の量は大きく変化していないか、もし変化した場合は健康に悪影響を及ぼす心配はないか、予想外の変化が起こっていないか、などについて確認が行われます。こうした試験データが厚生労働省に提出され、専門家によって構成された食品安全委員会の「遺伝子組換え食品等専門調査会」で評価されて、消費者の意見収集がパブリックコメントとして実施され、その後食品として認可されます。
〈飼料としての安全性審査について〉
遺伝子組み換え作物の飼料としての安全性の確認は、遺伝子組み換え飼料を与えた家畜の安全性については「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(飼料安全法)」に基づいて農林水産省によって行われ、あわせてその家畜から生産される畜産品を食した場合のヒトへの安全性については食品安全委員会の「遺伝子組換え食品等専門調査会」で「食品安全基本法」に基づいて評価されます。これらの結果、安全性が確認されたものだけが飼料として認められます。飼料の安全性確認の内容は、食品と同様に導入した遺伝子とそれによりもたらされる変化について、遺伝子組み換えの作物が、従来の飼料と比べて同等に安全性であるかが最大の評価ポイントです。
また家畜の肉、牛乳、卵については、組み込まれた遺伝子(DNA)やタンパク質が家畜の体内でアミノ酸へ速やかに消化されることが確認されているため、組み込まれた遺伝子が畜産物へ移行したりすることがないと確認されています。
〈環境影響の安全性審査について〉
遺伝子組み換え農作物の開発にあたっては、最初は閉鎖された実験室や温室などで実験が行われ、安全性を確認しながら徐々に試験栽培の規模を拡大していきます。それぞれの段階において「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」に基づいて、生物多様性を損なうおそれがないようルールが定められており、それに基づいて実験室や温室、隔離ほ場で実験が実施されています。
最初の段階は閉鎖系の実験室や温室で行われます(第二種使用)。ここでは安全性が未確認の組み換えDNA生物が外部に放出され、環境に影響を与える様なことがない様に、空気、水の出入りを含めた運用ルールが策定されています。カルタヘナ法では物理的および生物的な封じ込めの方法を規定しており、これを文部科学省と環境省が運用しています。
第二種使用での評価の後で、遺伝子組み換え農作物を栽培することによる環境への影響を調べるため、隔離ほ場試験が行われます(第一種使用)。ここでは遺伝子組み換えによって生育の特性が変化して野生動植物を駆逐してしまうようなおそれがないか、有害物質を作るようになってはいないか、近縁の植物との交雑性に変化はみられないかなどについてデータを評価し、周辺環境に影響を及ぼさないことが農林水産大臣と環境大臣によって認められた場合のみ、承認される仕組みになっています。これらの安全性審査にパスしなければ、商品化されることはなく、市場に流通することはありません。
安全性確認のポイント
| 関連する省庁と法律 | 評価の例 |
| リスク評価機関 | リスク管理機関 |
| 食品安全性 | 内閣府食品安全委員会
(食品安全基本法) | 厚生労働省
(食品衛生法) | 遺伝子を組み込む対象作物は何か(食経験の有無など)
どのような遺伝子を組み込んだか
組み込む遺伝子によって、どのようなタンパク質が作られるか
新しく出来たタンパク質は有害ではないか
栄養素などが大きく変化していないか
食べる部分など利用方法は変わっていないか
アレルギー評価について
・人の胃液や腸液で容易に分解されるか
・加熱処理で容易に分解されるか
・これまでに知られているアレルギー物質と構造が似ていないか |
| 飼料安全性 | 内閣府食品安全委員会
(食品安全基本法) | 農林水産省
(飼料安全法) | 既存の飼料作物と遺伝子組み換え飼料作物を比較評価する
飼料を通じた食品の安全性について
・新しくできたタンパク質が、家畜の中で人に有害な物質に変化しないか
家畜に対する飼料の安全性について
・新しくできたタンパク質が家畜に有害でないか |
| 環境安全性 | 文部科学省 環境省 (カルタヘナ法) | 実験室、温室での試験内容 ・組み込まれた遺伝子が目的どおり働いているか ・植物の大きさや形、花粉の量などが変わっていないか ・有害物質が生産されていないか、土壌の微生物に影響を与えていないか |
農林水産省 環境省 (カルタヘナ法) | 隔離ほ場での試験内容 実験室、温室などの試験内容に加えて ・野外での生育状態、越冬性などが変わっていないか ・元となった農作物や近縁野生種との交雑の程度の確認 |