遺伝子組み換え作物の基礎知識

2.遺伝子組み換え技術と方法

遺伝子組み換え技術とは

 人間は昔からより良い作物を求めて、様々な品種改良を行ってきました。私たちが現在食べている農作物は、ほとんどが品種改良の産物で、もとの原種とはかけ離れたものです。昔から人間は品種改良のために、違う性質を持ったものを交配したり、突然変異などによって誕生した品種との交配を行ってきましたが、こうした方法は偶然に頼るところが大きく、望んでいる性質が確実に得られないこと、成功までに大変な時間や労力を費やすなど多くの限界がありました。
 しかし遺伝子の役割が発見されたことにより、その技術は大きく前進しました。生物に特定の性質を持たせる遺伝子のメカニズムが解明されたことで、遺伝子の働きを直接品種改良に応用することが可能となったのです。これが遺伝子組み換え技術です。この技術を利用すると、目的とする遺伝子だけを取り出し、その遺伝子を入れたい生物(作物)に入れることができるため、望んだ性質を持つ品種を早く、確実に獲得できるというメリットがあります。
また、遺伝子はすべての生物が共通して持っているため、交配可能な同種作物、近縁種以外の生物間からの遺伝子の導入も可能となり、品種改良の可能性も大きく広がりました。

 私たちが今、食べている農産物のほとんどは、栽培しやすい、おいしいといった、人間にとって都合の良い作物を目指し、人間が野生種から人工的に品種改良を重ねてきた結果です。このため遺伝子組み換え技術は、農業にとって不可欠な、品種改良の延長線上にあると考えられています。



遺伝子組み換えの方法

 遺伝子組み換え技術では、目的とする遺伝子だけを組み込むことが可能です。例えば「害虫に強い」といった性質を加えたい場合は、まず植物や微生物など幅広い生物の中から「害虫に強い」性質を持っている生物を探し、その生物がもつ「害虫に強い」性質を持たせる遺伝子を特定します。
 次にその遺伝子を取り出して、品種改良の対象となる植物の細胞に導入します。導入する際には、葉や種子や生長点などの組織、あるいは植物細胞の塊であるカルスを使います。遺伝子の導入方法としては、アグロバクテリウム法とパーティクルガン法が主流です。


アグロバクテリウム法
 アグロバクテリウムという微生物が、植物の細胞に自身の遺伝子を導入させる性質を利用した方法です。アグロバクテリウムの遺伝子に目的とする有用遺伝子を結合させ、アグロバクテリウムを植物に感染させる事で、植物に目的とする遺伝子を導入することができます。アグロバクテリウムは土壌中に一般に見られる細菌の一種で、自然界でもこの土壌微生物の働きにより、植物内で遺伝子組み換えが起きています。この自然の働きを利用したのが、アグロバクテリウム法です。


パーティクルガン法
 金の微粒子に有用な遺伝子を付着させ、高圧ガスの力で植物の組織に打ち込んで導入する方法です。


 以上のような方法の後で、目的とする遺伝子が植物体に組み込まれた事を確認できた植物細胞を選び、この細胞から植物を再生すると、遺伝子が組み換えられた植物体が得られます。
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