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遺伝子組み換え作物の基礎知識
1.遺伝子の働き
遺伝子とタンパク質
生物は個体によって「背が高い」「病気に強い」など、形や性質が異なります。遺伝子はこうした形や性質を決める因子となるもので、その本体は生物の細胞の中にあるDNAとよばれる物質でできています。DNAは、A(アデニン)T(チミン)G(グアニン)C(シトシン)という4種の塩基と呼ばれる化学物質で構成されており、その並び方(塩基配列)の特定の配列(遺伝子)が、アミノ酸の種類を決める指令となります。このアミノ酸が順番につながってタンパク質を作り、このタンパク質が酵素として働く事で背が高い、低いといった生物の性質が決まります。遺伝子はタンパク質をつくることで、いわば生物の設計図のような役割を果たしています。
全ての生物は細胞の中に遺伝子をもっており、私たちが口にする肉や魚、青果物などの食べ物も例外ではありません。私たちはこれらの食品によって、膨大な量の遺伝子(DNA)を日々食べていることになります。
細胞の中にある染色体には、種類の違う遺伝子がいくつも並んでおり、そこから様々なタンパク質がつくられ、生物の個体差となって現れます。染色体に書き込まれた遺伝情報全体をゲノムと言いますが、現在までにイネやヒトなど様々な生物のゲノム解読が行われています。ゲノムの解読によって、遺伝子による個体差を解明することができるため、例えば医療においては、一人一人にあった治療薬が開発されるなど、様々な分野で応用が期待されています。
遺伝子の解明とバイオテクノロジー
1953年にワトソンとクリックによってDNAの構造が解明されて以来、遺伝子の働きを応用した新しい分野でのバイオテクノロジーの研究が盛んになりました。
バイオテクノロジーとは直訳のとおり生物の機能を利用した技術で、人類にとっては微生物を利用して作られる発酵食品など、古くから馴染みのあるものでした。これに対して新しいバイオテクノロジーは、生物の組織や細胞、遺伝子などの働きを利用したもので、1970年代以降急速に進歩し、医療分野や環境分野、工業分野、農業分野など様々な分野で貢献しています。
たとえば医療分野では再生治療や遺伝子治療、新薬の開発などが行われ、環境分野ではバイオプロセス等の利用によって環境負荷が低減され、化石燃料に替わる新たなエネルギーを作るといった、、持続可能な社会に役立つ技術として活用されています。
21世紀は生命科学の世紀であるといわれるように、バイオテクノロジーは私たちの生活をより良くするための技術として注目されています。
農業分野におけるバイオテクノロジー
遺伝子の働きが解明されることによって、農業分野におけるバイオテクノロジーの分野も大きく進展しました。その一つが遺伝子組み換え技術です。たとえば、植物に「害虫に強い」「除草剤の影響を受けない」といった特定の働きをもった遺伝子を導入して、新たな品種を得ることが可能となりました。遺伝子組み換え農作物は、1994年に日持ちの良いトマト、続いて1996年に除草剤耐性の大豆や害虫抵抗性のトウモロコシなどの商業栽培が開始されました。それ以来、農業生産上の労力やコストの低減、農薬使用量を大幅に削減できること、不耕起栽培など温室効果ガス排出の少ない、環境に易しい農業が出来ることから、世界中の国で栽培が開始され、今日まで栽培面積が拡大し続けています。