遺伝子組み換え作物のメリットに関する資料

遺伝子組み換え作物:1996から2008年における世界の社会経済および環境に対する影響

グラハム・ブルックス(Graham Brookes)、ピーター・バーフット(Peter Barfoot)
PGエコノミクス社(PG Economics);英国


 英国の経済学者グラハム・ブルックスとピーター・バーフットは、遺伝子組み換え作物が過去13年間(1996〜2008年)に経済・環境に及ぼした累積的な影響を定量化した、最新の研究を発表しました。著者らは、遺伝子組み換え作物が世界の経済・環境に大きなベネフィットをもたらしているとともに、世界の食糧安全保障に重要な貢献を果たしていると、報告しています。報告によると、過去13年の間に、遺伝子組み換え作物の導入によって農業生産活動によって生ずる温室効果ガス排出量や農薬散布量を削減できたと同時に、農業生産者の収入が大幅に増加したとしています。さらに、遺伝子組み換え技術によって多くの農業生産者の単位面積あたりの収量が増加し、結果として作物生産量が向上したとしています。報告書全文はwww.pgeconomics.co.ukより入手できます。また、2本の要約記事が、農業バイオテクノロジーの管理・経済に関する、査読(同分野の専門家による論文審査)付き学術誌AgBioForum誌に発表されています。環境に対する影響を要約した記事はhttp://www.agbioforum.org/v13n1/v13n1a06-brookes.htmに、生産量に対する影響を要約した記事はhttp://www.agbioforum.org/v13n1/v13n1a03-brookes.htmに掲載されています。


研究の要点:

環境に対する影響:

 遺伝子組み換え作物が環境に及ぼした影響については、遺伝子組み換え作物が栽培されている国々の各年データを利用し、遺伝子組み換え作物と非遺伝子組み換え作物の農薬使用量を比較し、その変化に基づいて算出されています。また、総農薬使用量の変化に加え、環境影響指数(environmental index quotient ; EIQ)を算出することにより“環境フットプリント”の変化も定量化しています。このEIQ指標によって、遺伝子組み換え作物ならびに非遺伝子組み換え作物の栽培体系の中で使用される特定の農薬製品の環境特性を比較してます。著者らは1996年以降、世界の遺伝子組み換え作物への農薬使用量は7億7,500万ポンド(3億5,200万キログラム)減少、比率にして8%を超える極めて大幅な削減が見られた、と報告しています。同様に重要な報告として、遺伝子組み換え作物の導入によって農薬使用による総合的な環境影響(EIQ)は16%以上も低下し、環境への影響が世界的に大幅に削減されました。



遺伝子組み換え作物への農薬使用量の変化による影響:1996〜2008年
作物 HT
  大豆  
HT
トウモロコシ
HT
  ワタ  
HT
 ナタネ 
BT
トウモロコシ
BT
  ワタ  
総変化量
農薬使用量の変化
(単位:百万kg)
-50.5 -111.6 -6.3 -13.7 -29.9 -140.6 -352.4
農薬使用量の変化
(%)
-3.0% -7.5% -3.4% -17.6% -35.3% -21.9% -8.4%
環境影響指数の変化
(%)
-16.6% -8.5% -5.5% -24.3% -29.4% -24.8% -16.3%

 農薬による環境への影響は、使用方法に違いがあるため、国ごとに、また年によりばらつきがありますが、農薬の影響が世界全体で減少傾向にあるという点においては、過去13年間、極めて一貫しています。

 著者らはさらに、遺伝子組み換え作物が環境への二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも大きく貢献してきたと指摘しています。遺伝子組み換え作物の導入に伴うCO2排出量削減には、2つの要因があります。第1の要因として、遺伝子組み換え作物によって、農薬散布と耕起の回数が減少し、このためディーゼル燃料使用量が減少したこと。遺伝子組み換え作物の栽培による燃料使用量の減少によって、2008年には12億kgのCO2が削減されました。第2の要因としては、遺伝子組み換え作物の導入により畑を耕起する回数が減少したことから、土壌中に固定・隔離される炭素量が増加し、これによって2008年のCO2が140億kg以上削減されました。著者らは、遺伝子組み換え作物に起因するこれら2つの要因により、2008年には、大気中へのCO2排出量が合計で156億kg削減されたと報告しています。この削減量は、年間700万台近くの自動車を道路上から撤去した事に相当します。

遺伝子組み換え作物による二酸化炭素排出量への影響および乗用車換算値、2008年
燃料使用量の減少によるCO2排出量の減少 炭素固定によるCO2排出量の減少 道路を走行する平均的乗用車に換算した1年間の削減台数 *
単位 10億kg CO2 10億kg CO2 100万台
       
2008年 1.2 14.4 6.9
*乗用車の平均的なCO2排出量は、次の式に基づいて算出した。:150 gm CO2/km X 15,000km/年 = 年間2,250 kg CO2


経済効果

 著者らは、1996年以来栽培されてきた各種の遺伝子組み換え作物について、それぞれが著しい経済効果をもたらしたと報告しています。遺伝子組み換え作物を栽培している全ての国々において、農業生産者は、収量の増加もしくは生産コストの減少に伴い経済的収益を増加させています。2008年の遺伝子組み換え作物による農業生産者所得の増加額は94億ドルに達し、1996年以降の遺伝子組み換え作物による農業生産者所得の累積増加額は520億ドル(約4兆7,000億円)を超えたと報告しています。このうち発展途上国の農業生産者の2008年の所得増加額が、全体の50%を占めまています。これは主として、害虫抵抗性ワタと除草剤耐性大豆によるものです。これに加え、経営効率の改善など間接的、あるいは非金銭的効用によって農業生産者にさらに付加的な価値がもたらされていると著者らは指摘してます。米国の農業生産者が2008年単年度に得た追加価値は8億5,500万ドルと推定され、直接所得による利益の21%の追加に相当しますが、経営改善効果などの間接的な利益は今回の利益計算には含まれておらず、下表の経済効果額は控えめに評価された数値といえます。


遺伝子組み換え作物による世界の農業生産者の所得利益 (100万ドル)
作物 HT
  大豆  
HT
トウモロコシ
HT
  ワタ  
HT
 ナタネ 
BT
トウモロコシ
BT
  ワタ  
総所得
2008 2,926 434 15 392 2,646 2,905 9,367
1996〜
2008年
23,342 1,896 856 1,829 8,344 15,613 52,042


生産量に対する影響:
 遺伝子組み換え作物の導入に伴う収量増加は、2008年の大幅な生産量増加に貢献した。2008年には遺伝子組み換え作物によって、世界の作物生産量が約3,000万トンも増加しました。

生産性の変化、
  2008年  
100万トン
生産性の変化、
1996〜2008年
100万トン
大豆10.1 74
トウモロコシ  17.1 80
ワタ1.8 8.6
ナタネ0.6 4.8
合計29.6 166.14



主要な研究結果:

  • 1996年以来、農業生産者は、農薬使用量を3億5,200万キログラム削減、比率にして8%を超える削減を実現しました。比較すると、この量は、欧州連合(EU)諸国の年間農薬使用量の約125%に相当します。
  • 農薬散布が減少した結果、遺伝子組み換え作物に使用される農薬の世界的な“環境影響”(EIQ)は16%以上減少しています。
  • 除草剤耐性の遺伝子組み換え作物により、多くの地域で減耕起・不耕起による生産システムの採用が促進された結果、土壌浸食が減少しました。


遺伝子組み換え作物は、農作業に伴う温室効果ガス排出量の削減に著しく貢献し、156億kgの二酸化炭素削減を実現した。これは、年間700万台近くの自動車を路上から撤去したことに相当する。

  • 遺伝子組み換え作物の導入により、2008年、農薬散布と耕起が減少しました。これにより遺伝子組み換え作物の栽培においては燃料使用量が減少し、12億kgの二酸化炭素排出量削減につながりました。
  • 遺伝子組み換え作物により、減耕起・無耕起による生産システムの採用が促進され、土壌中に固定・隔離される植物残渣が増加。こうした炭素固定により、2008年には、二酸化炭素排出量換算で144億kgが削減されました。


報告書は、過去12年と同様に2008年にも、遺伝子組み換え作物を栽培する全ての国々において、農業生産者の純所得が増加したことを裏付けている。

  • 2008年、遺伝子組み換え作物を栽培した農業生産者の純所得は、遺伝子組み換え作物を栽培しなかった生産者に比べて、90億ドル多くなりました。
  • 1996年以来、遺伝子組み換え作物を栽培する世界の農業生産者の純所得は生産性の向上とコスト削減の両方により増加、その累積総額は520億ドルに達しました。
  • 遺伝子組み換え作物がもたらした農業生産者の所得増加のうち、発展途上国の農業生産者の所得増加分が世界全体の半分を占めており、これは主として、害虫抵抗性ワタと除草剤耐性大豆によるものです。


遺伝子組み換え作物は、トウモロコシ、大豆、ワタ、ナタネの2008年の世界の生産量の増加に貢献した。

  • 遺伝子組み換え作物による生産性向上により、2008年の生産量は、それぞれ、大豆(1,010万トン)、トウモロコシ(1,710万トン)、ワタ(180万トン)、ナタネ(60万トン)増加しました。
  • 1996年以来、遺伝子組み換え作物の導入により、非遺伝子組み換え作物の場合よりも増加した生産量は、累計1億6,600万トンに上ります。
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