英国の経済学者Graham BrookesとPeter Barfoot の新しい研究は、バイテク作物の経済、環境への影響を過去11年間(1996-2006)の累積として定量化しています。バイテク作物が顕著な経済的、及び環境ベネフィットをもたらし、世界的な食糧安全保障に大きく貢献したと報告しています。過去11年間にわたり、バイテク作物の導入は農業からの温室効果ガスの排出削減、除草剤の散布の削減、農業生産者の著しい収入増加に寄与していると著者は報告しています。また、この技術は多くの農業生産者たちにより高い収量をもたらしており、この技術が無ければ、世界のトウモロコシや大豆の価格は現在よりもはるかに高くなっていただろうと述べています。この報告書の全文は本ページ末尾に添付しております。
また、PG Economics社HPの以下のページでもご紹介されています。
http://www.pgeconomics.co.uk/
さらに、サマリーが論文審査のある学術専門誌AgBioforumで発表されることになっています(www.agbioforum.org)。
遺伝子組み換え作物の環境面への影響を評価するため、遺伝子組み換え作物を栽培している国々での、遺伝子組み換え作物と非組み換え作物の農薬の使用量の変化を各年のデータを用いて比較しました(表5、表の番号は本文中のものを使用)。遺伝子組み換え作物に使用された農薬の総量の変化のみならず、遺伝子組み換え作物の「環境面での足跡」を環境影響指数(EIQ:脚注参照)を用いて調査しました。EIQは遺伝子組み換え作物と非組み換え作物にそれぞれにどのような農薬が使用されたのかを考慮して比較するために用いられた指標で、すでに他の科学者によっても公表されている資料の中でも使われてきました。この研究では世界的に遺伝子組み換え作物における農薬の使用は1996年当時と比べて総使用量のほぼ8%にあたる28万6,000トン減少していると報告しています。これは、農薬の使用による総合的な環境への影響(EIQ)という観点から見ると、遺伝子組み換え作物の導入によって総合的な環境への影響(EIQ)が15%減少したことを示しており(表5「環境への影響の変化」)、世界的な環境への影響という点からも重要な意味を持っています。
| 作物 | HT 大豆 | HT トウモロコシ | HT ワタ | HT ナタネ | BT トウモロコシ | BT ワタ | 総変化量 |
| 農薬使用量の変化 (m kg) | -62.4 | -46.7 | -32.1 | -7.9 | -8.2 | -128.4 | -285.7 |
| 農薬使用量の変化(%) | -4.4% | -3.9% | -14.3% | -12.6% | -5.0% | -22.9% | -7.8% |
| 環境への影響の変化 (%) | -20.4% | -4.6% | -14.5% | -24.2% | -5.3% | -24.6% | -15.4% |
農薬の影響は国ごとに、また年により、農薬の使用方法が異なるために異なっていますが、最初の11年の間全体的には明らかに減少傾向にあります。
さらに、遺伝子組み換え作物が二酸化炭素(CO2)の環境への排出量の減少に大きく貢献しているということを報告しています(表8)。この遺伝子組み換え作物によるCO2排出量の減少は以下の二つの要因に基づいています。第一に、遺伝子組み換え作物によるディーゼル燃料の使用減少です。それは農薬散布と耕起の減少によるものです。2006年に、遺伝子組み換え作物による農機の燃料の使用減少によるCO2の減少量は100万トン以上になりました。次に、遺伝子組み換え作物の導入に伴う耕起の減少により、土壌中の炭素量の増加が報告されています。2006年にはCO2の排出がほぼ1400万トン減少しています。これらの二つの要因によるCO2排出量の減少をあわせると、遺伝子組み換え作物の使用で、2006年には空気中への排出が1500万トン(230億lb)削減している報告しています。この土壌中での炭素保持による減少量は1年で600万台以上の車を路上から失くしたのと同じ量に相当します。
| 燃料使用量の減少によるCO2排出量の減少 | 燃料使用量の減少によるCO2排出量の減少の乗用車削減相当台数* | 炭素の土壌中保持によるCO2排出の減少 | 炭素の土壌中保持によるCO2排出量の減少の乗用車削減相当台数* | |
| 2006 | 120万トンCO2 | 54万台 | 1200万トンCO2 | 600万台 |
最後に、1996年から栽培された遺伝子組み換え作物による経済的影響を、各遺伝子組み換え作物ごとに算出しています(表1)。遺伝子組み換え作物が栽培されている全ての国の農業生産者が、高い経済的リターンを得ています。遺伝子組み換え作物からの農業収入は2006年には70億万ドル(約7,564億円)近く増加し、累計では340億ドル(約36,720億円)増加したと報告されています。この収入増の54%は開発途上国の農業生産者が2006年に得たもので、その大部分は害虫抵抗性ワタと除草剤耐性大豆によるものでした。経済的影響の計算は、収量と生産コストに基づいて控えめに計算したものです。経営効率の改善による生産者への付加的な価値も顕著であると思われますが、遺伝子組み換え作物によりもたらされた経済的価値の計算には含まれていません。
| 作物 | HT 大豆 | HT トウモロコシ | HT ワタ | HT ナタネ | BT トウモロコシ | BT ワタ | 総収入 |
| 2006 | 3,091 | 296 | 21 | 227 | 1,131 | 2,149 | 6,940 |
| 96-06 | 17,455 | 1,110 | 814 | 1,096 | 3,634 | 9,567 | 33,769 |
商業化から11年、遺伝子組み換え作物は世界の環境に顕著な良い影響をもたらしました。