遺伝子組み換え作物のメリットに関する資料

商業化開始から最初の9年間(1996〜2004年)のグローバルな環境への影響

(報告書公表日:2005年10月12日)

調査の概要

2005年は、1996年に遺伝子組み換え(GM)作物が始めて栽培されてから10回目の作付けシーズンになります。この記念すべき通過点は、本技術が世界の農業に与える影響について厳しく評価する機会でもあります。この調査では1996年以降GM作物の作付けを行っている諸国それぞれについて、本技術の農業所得に対する世界的な経済影響、ならびに農薬の使用と温室効果ガスの排出に関連した環境影響について調べます。分析結果は、ほ場レベルでの純経済利益が累計で実質270億ドルに達していることを示しています。この技術によって、農薬の噴霧量が1億2700万kg減少し、さらに農薬使用に関連したエコロジカル・フットプリント※1を14%減少しました。また、技術は、農業に由来する温室効果ガスの排出量を極めて低減しましたが、これは道路上から 500万台の自動車を撤去するのに相当します。

キーワード: 炭素隔離※2、コスト、環境影響、指数、遺伝子組み換え(GM)作物、収量

※1 エコロジカル・フットプリント:食料や木材の供給、エネルギー消費など、人類の社会経済活動がどれだけ地球環境に負荷をかけているかを計算し、示すもの。
※2 炭素隔離:一般的には二酸化炭素を回収し、長期にわたり安定的に貯蔵することを意味する。代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出に対する技術的解決法として研究されている。


はじめに

この調査は、1996年に遺伝子組み換え(GM)作物が商業ベースで導入されて以降のグローバル経済への影響、ならびに環境影響に関する調査によってえられた結果を示しています。すでにいくつかの調査でGM作物の経済的展望、ならびに環境展望もそれぞれ実施されています。しかし、これらは形質、国もしくは年度で限定されているケースが一般的でした。したがってこの調査は、過去の調査から得られた経済分析の結果を照合、また外挿したものとさらに新しく環境影響分析を実施した結果を組み合わせて、1996-2004年という期間の影響を累積的に数値化することを目的としています。9年間にわたる世界的規模での累積分析は、作物、形質ならびに国による影響の顕著な違いを明確化するだけでなく、技術の影響の経年的傾向もかなり一貫していることを示すはずです。

経済影響の分析は、生産者所得への効果に対象を限定していますが、これは、これが生産者にとって採用決定の主要な要因であることから、非常に多数の分析が行われてきた領域だからです。環境影響分析はGM作物に伴う殺虫剤と除草剤利用の変化と、その結果生じる作物生産に由来する環境負荷への影響に限定しています。これまでの調査はGM作物と農薬使用量の変化についての調査に限定されていましたが、今回は調査を拡大し、種々の農業生産システムで使用される特定の農薬と、それらの環境負荷影響に関するより直接的な評価も含めています。最後に、地球上の温室効果ガス(GHG)排出削減に対する遺伝子組み換え作物の貢献についても、この問題の地球環境に対する重要性を考慮して初めて調査します。

方法

このレポートは、ほ場レベルでのGM作物由来の影響に関する既存データについての広範囲の分析を基盤にして編集されました。もちろん、商業的栽培の影響に関する一次データが、年度別また国別であらゆる作物について入手可能というわけではありませんが、確認された代表的な過去の調査はすべて利用しました。この調査結果は、発表された分析の基礎として使用されています1。ただし当該一次分析は基礎データをもとに実施しており、とりわけ顕著なのは環境影響との関連性です。

公表された分析は、各種作物の平均実績ならびに記録された影響に大きく依存しています。ほ場レベルでのこの技術の経済的成果ならびにエコロジカル・フットプリントは、地域間ならびに国別ならびに地域内・国内の双方で非常に広く変動します。結果として、この技術の影響、ニュー・テクノロジー、GMまたはその他の方法は、地域レベルで変動しやすくなります。したがって、成果と影響については、作物と形質の組合せに関してケースバイケースを基本に検討しなければなりません。

農業生産システムは動的であり、時間とともに変わります。この分析では、GM生産技術と極めて従来的な選択肢とを比較することによって、可能であればこの問題に対処しようとしています。この従来型の選択肢とは、GM技術が利用可能でなかったなら、有効性で競争可能であったかもしれない技術です。

1:ある1つの主題に関係する調査部分がいくつかあると確認されたもの(例えば作物の収量に対するGM形質利用の影響)では、使用した結果はおおむね平均をベースとしています。

農業所得への効果

方法:
ほ場レベルの影響の評価に関する第一の方法は、できるだけ該当する比較可能な複数年のデータについて既存の文献を精査することであり、また調査した9年間にわたる影響を推定する基盤として調査結果を使用することです。ここに示されているすべての数値は、提示されている年の名目値であり、平均価格と収量には各年の数値を使用しています。

使用する基本通貨は米国ドルであり、他の通貨による財務的影響はすべて各年の年平均為替相場で年ごとに米国ドルに換算しました。このアプローチは収量と価格変動に起因する各年の農業所得の変動を反映しており、さらに、GM作物の採用が与える地球規模での作物供給と、世界価格への影響可能性も明らかにします。この単純化されたアプローチは、GM技術の本当の影響を拡大評価、もしくは過少評価する可能性があることは明らかです。著者としては、これによって本調査の弱点が表面化すると認識しています。

しかし、現行価格を使用することによって、この分析にある程度のダイナミズムが盛り込まれます。もし固定価格を使用したとすればこのダイナミズムは失われたはずです。収量の影響が単年もしくは限られた年数の調査で得られた地域では、これらを百分率の影響変動に変換して、記録されている一般的な平均収量に基づいて他の年度に応用しました。たとえば、単年度の調査で収量増5%が確認された場合、この5%をその他の年で記録されている平均収量に適用しました2

2:平均基礎収量は、(必要に応じて)技術の収量に関するあらゆる影響を考慮するために下方修正しました。 このような方法では、あらゆる収量増加の総生産量への影響は、拡大評価されません。しかしながら、この仮定方法を使用したとしても依然、年度によっては収量の効果について過大評価もしくは過小評価する可能性のあることを著者としては認識しています。理由は限られた年数の収量影響調査の結果を他の年の影響について推定する基礎として使用しているからです。しかしなから、形質別、国別、年別に関する総合的な収量影響解析が存在しない場合に累積的な影響を推定するにはこれが適切なアプローチであると著者は考えるからです。

結果:
GM技術は、生産性の強化と効率増の組合せに由来する農業所得に対して、非常にプラスの影響を与えました(表2)。2004年では、GM作物に由来する直接的な世界の農業所得利益は、48億ドルでした。アルゼンチンの第2期作の大豆に起因する追加収入を考慮した場合は、この所得増加は65億ドルまで上昇します。これは、実質的影響をもつ大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワタの4種類の主要作物の世界的生産額に3.1%〜4.2%程度加算することに相当します。1996年以降、アルゼンチンでは農業所得は190億ドル超増加し、また第2期作の大豆利益を含めると270億ドル増加しました。

表2.GM作物の栽培による世界の農業所得の利益:1996-2004年 (US100万ドル)

形 質 2004年の
農業所得
1996-2004年の
農業所得
GM採用国におけるこれらの作物の生産総額に対する割合でみた2004年の農業所得 (%) これらの作物の世界生産の総価値に対する2004年の農業所得の利益の割合 (%)
GM HT 大豆 2440(4,141) 9,300(17,351) 5.6(9.5) 4.0(6.7)
GM HT トウモロコシ 152 579 0.6 Less than 0.5
GM HT ワタ 145 750 1.4 0.53
GM HT ナタネ 135 713 8.3 1.34
GM IR トウモロコシ 415 1,932 1.4 0.8
GM IR ワタ 1,472 5,726 10.5 5.3
その他 20 37 N/a N/a
合計 4,779(6,480) 19,037(27,088) 5.3(7.2) 3.1(4.2)

注:HT=除草剤耐性、 IR=害虫抵抗性、Others=ウイルス抵抗性のパパイアならびにカボチャ、ルートワーム抵抗性トウモロコシ。 ( )内の数値にはアルゼンチンの二期作の利益が含まれる。合計の数値には“その他”は含まれない(すなわち大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワタの4大作物に関連するデータである。)

農業所得において最も増加の大きいのは大豆の分野であり、主としてコスト節減に由来していましたが、2004年にGM HT大豆によって発生する41億4000万ドルの追加収入は、GM栽培国における作物生産額に9.5%加算することに相当します。これはまた、あるいは世界の大豆作物額620億ドルに6.7%相当額を加算することに相当しました。しかしこれらの経済的利益は、主要GM採用国における大豆生産量の顕著な増加という状況の範囲内にあります。1996年以降、米国、ブラジル、アルゼンチンの主要大豆生産国における大豆の生産地域と生産額はそれぞれ56%ならびに66%増加しました。

ワタの分野でも、高収量と低コストの組合せを通して実質的増加が生じました。2004年、GM作物採用国ではワタの農業所得レベルは、16億2000万ドル増加しました。さらに、1996年以降、この分野はさらに65億ドルの追加利益を得ました。2004年の所得額は、これらの国のワタ作物額にほぼ12%付加し、これはまた世界のワタ生産総額280億ドルに5.8%付加したのと等しい値です。これは、新しい2種類のワタの種子技術という条件を付加したのと実質的に同じ価値の増大です。

トウモロコシおよびナタネの分野でも農業所得への有意な増加という結果が得られました。トウモロコシにおけるGM害虫抵抗性(IR)とGM HT技術の組合せは1996年以降の農業所得を25億ドル以上増加させました。北米のナタネ分野ではさらに7億1300万ドル上乗せになりました。

(表5)は、主要GM採用国における農業所得への影響をまとめたものです。これは、アルゼンチンにおけるGMHT大豆、中国のGMIRワタ、米国における多様なGM栽培品種に起因する重要な農業所得の利点に焦点をあてています。またここでは、南アフリカ、パラグアイ、インド、メキシコのような途上国で得られている農業所得利益が拡大レベルにあることも示しています。

ほ場の収益性のように、こうした数値で示すことが可能な直接的影響と同時に、数値化するのがより一層難しい間接的影響というもう一つの重要な要素もあります(たとえば耕起回数を減らす低耕起農法もしくは不耕起農法の採用奨励、生産リスクの削減、利便性、生産者ならびに農場作業者の農薬暴露の低減、作物の品質向上)。GMを採用している生産者は、こうした目に見えにくい利益が、この技術の採用に大きく影響したことをしばしば述べていました。したがって、本論文での分析においてこれらの影響を除外することは、数値化される農業所得の利益は確実であることを示唆するものの、この方法論の限界にもなります。

表5.主要国におけるGM作物の農業所得の利益:1996-2004年 (US100万ドル)

形 質 GM HT
大豆
GM HT
トウモロコシ
GM HT
ワタ
GM HT
カノーラ
GM IR
トウモロコシ
GM IR
ワタ
合 計
米国 6,371 564 746 96 1,626 1,301 10,704
アルゼンチン 9,965 n/a n/a n/a 120 16 10,101
ブラジル 829 n/a n/a n/a n/a n/a 829
パラグアイ 80 n/a n/a n/a n/a n/a 80
カナダ 55 16 n/a 617 119 n/a 807
南米 0.8 0.2 0.01 n/a 44 11 56
中国 n/a n/a n/a n/a n/a 4,160 4,160
インド n/a n/a n/a n/a n/a 124 124
オーストラリア n/a n/a   n/a n/a 70 70
メキシコ n/a n/a n/a n/a n/a 41 41

注:アルゼンチンのGM HT大豆には、第2期作の大豆に由来する利益$8兆500億ドルも含まれる。N/a=適用不可。

殺虫剤と除草剤使用の変化に由来する環境影響


方法:
GM作物の農薬利用における変化を表す最も一般的な方法は、散布する農薬量(定量的な量)に関するものです。GM作物と非GM作物の生産システムで使用される総農薬量の比較は環境影響の有用な指標になりえますが、これは不完全な手段です。その理由は、GM作物ならびに非GM作物の作付方式で使われる個別の害虫制御プログラムの違いを考慮していないからです。たとえば、GM作物のシステム対従来作物のシステムで使われる個別のプロダクトの相違点、有効性のために使用される農薬の比率の違い、環境特性の相違点(流動性、持続性その他)は、使用した総農薬量という一般的な比較では隠れてしまいます。

GM作物の環境影響のより確固たる測定値を得るために、下記に提示した分析には環境影響指数(EIQ)として知られている指標を介して、使用する特定の農薬について評価すると同時に、農薬の有効成分の使用量の双方の評価を含めています。このユニバーサルな指標は、Kovach、Petzoldt、Degni、Tette(1992)によって開発され、しかも毎年更新されており、単一のほ場価値に個別の農薬の種々の環境影響を1ヘクタールあたりで効果的に盛り込みます。これは、環境へのGM作物の影響について、バランスのとれた評価を提供します。なぜならば、個々の農産物に関連する主要な毒性データと環境暴露データを最大限に活用しており、また農場作業者、消費者、生態系への影響に応用可能であり、そして環境影響の一貫したかつ総合的な測定手段を提供するからです。しかし読者は、EIQは単なる1個の指標であり、したがって、すべての環境問題ならびに環境影響を考慮しているというわけではない点にも留意しなければなりません。

EIQ値に、ヘクタールあたりで消費される農薬の有効成分(ai)量を乗じて、ほ場のEIQ値を算出します。たとえば、グリホサートのEIQ評価は15.3です。ヘクタールあたりに使用するグリホサート量を乗じてこの評価をもちいると(例えば仮定の例として:1.1kg/ha)、グリホサートのほ場EIQ値は16.83/haに相当します。

したがって使用するEIQ指標は、従来型の作物生産システムとGM作物生産システムのほ場EIQ/haの比較に、各システムの総エコロジカル・フットプリントもしくは負荷、それぞれのほ場EIQ/ha値の一次関数、各々の生産様式(GM対非GM)で栽培される地域と一緒に使用されます。環境指標は研究者には一般的に使用されており、さらにEIQ指標はBrimner、Gallivan、Stephensonが、GMナタネと非GMナタネの環境影響の比較に関する研究のなかで引用しました(2004年)。

EIQ方法論は、従来作物とGM作物の典型的なEIQ値を計算して比較し、さらにそこからこれらの値を国家レベルの値へと集計するために使用しました。年度別に従来作物、およびGM作物を栽培する各地域での農薬使用量を、もしGM作物ではなくて各年に栽培される作物がすべて従来技術を用いて生産されたなら、たぶん消費したはずであろう農薬量と比較しました。これは、各分野もしくは各国の農業相談員や研究アドバイザーが提供する従来作物およびGM作物に対する典型的な除草剤や殺虫剤の使用法を確認し、また活用するというSankulaとBlumenthal(2004)3が用いたアプローチを基盤としています。このアプローチは、GM作物と従来作物の間の相違点を差別化して各国における除草剤または殺虫剤使用データの入手可能性に関するギャップに対応するために選ばれました。そのうえこれによって、GM作物が作物の総作付面積のうちのかなりの部分を占める場合にGM作付方式と非GM作付方式を比較することが可能です。たとえば、大豆作物の総作付面積の60%以上がGM作物であるという数カ国のケースです。この場合、この2グループの農業方法を比較するのは合理的ではありません。なぜらば、残りの非採用者は、雑草や害虫の被害が平均よりも少ない地域や伝統的に集約性の低い農業生産システムの地域であって、それゆえに農薬の使用量が平均以下という特徴のある地域の生産者という可能性があるからです。

3:同様に他の研究者も適用(例えばKleiter et al.,2005)

結果:
GM作物は、農業生産の地球環境への影響の大幅削減に貢献してきました(表6)。1996年以降、農薬の使用量は1億7200万kg(6%削減)減少し、GM作物によって全体的なエコロジカル・フットプリントは14%減りました。絶対的な条件として、最大の環境利益はGMHT大豆の採択と関係しており、世界的に大豆作付け面積のなかでGM大豆が占める割合が大きいことを反映しています。GM大豆の除草剤使用量は1996年以降4100万kg減少(4%削減)し、全体的なエコロジカル・フットプリントは19%減少しました。南アメリカをはじめとした数カ国では、記録に残る量に比例するほどの除草剤量増加とGMHT大豆の採択が時期的に重なっている点に留意する必要があります。これは、GMHT技術には、従来の耕作システムから、それぞれ固有の環境上の利益をもつ不耕起農法もしくは低耕起農法への転換ならびに持続を促進する役割があることを強く反映しています。したがって、使用する除草剤量の純増加は、この生産システムの変更ならびに農業生産システムの変化の全体的活力に起因するGHG排出の削減との関係で位置づけられるはずです(下記参照)。

表6.世界中で栽培されているGM作物に由来する除草剤と殺虫剤の使用量の変化が与える影響:1996-2004年

形 質 農薬使用の
変化(100万kg)
ほ場EIQの変化
(100万ほ場EIQ/
ha単位)
農薬ai使用の
変動 (%)
EIQフットプリントの
変動 (%)
GM HT 大豆 -41.4 -4,111 -3.8 -19.4
GM HT トウモロコシ -18.0 -503 -2.5 -3.4
GM HT ワタ -24.7 -1,002 -14.5 -21.7
GM HT カノーラ -4.8 -252 -9.7 -20.7
GM IR トウモロコシ -6.3 -377 -3.7 -4.4
GM IR ワタ -77.3 -3,463 -14.7 -17.4
合計 -172.5 -9,708 -6.3 -13.8

また大きな環境利益は、GM害虫抵抗性(IR)ワタの採択からも得られています。増加益は、ヘクタールあたりのベースではあらゆる作物のなかで最大でした。1996年以降、生産者はGMIRワタ作物の採用によって殺虫剤の使用を7700万kg削減し(15%削減)、エコロジカル・フットプリントを17%減らしました。重要な環境利益は、トウモロコシとナタネの分野でも起こりました。トウモロコシの分野では、殺虫剤使用量の削減と環境的により穏やかな除草剤へ切り替えの組み合わせによって農薬の使用が2400万kg減少し、エコロジカル・フットプリントは7.8%減少しました。ナタネの分野では、より環境的に穏やかな除草剤へ切り替えることによって生産者は除草剤使用を500万kg減らし(10%削減)、さらにエコロジカル・フットプリントはほぼ21%低下しました。(主要なGM採用国に関する)殺虫剤および除草剤使用の変化による国レベルでの影響を、(表7)にまとめて示しています。




表7.主要国のGM作物の採用に伴う農薬使用量の変動に由来するエコロジカルフットプリントの削減:1996-2004年 (ほ場EIQ値の減少 %)

形 質 GM HT
大豆
GM HT
トウモロコシ
GM HT
ワタ
GM HT
カノーラ
GM IR
 トウモロコシ
GM IR
 ワタ
米国 28 3 23 32 4.4 20
アルゼンチン 20 n/a n/a n/a 0 6.4
ブラジル 4 n/a n/a n/a n/a n/a
パラグアイ 10 n/a n/a n/a n/a n/a
カナダ 8 4 n/a 20 NDA n/a
南米 4 0.4 5 n/a 18 NDA
中国 n/a n/a n/a n/a n/a 28
インド n/a n/a n/a n/a n/a 2.1
オーストラリア n/a n/a 3 n/a n/a 21.2
メキシコ n/a n/a n/a n/a n/a NDA

注:n/a=適用不可。NDA=データ入手不可。アルゼンチンではGM IRトウモロコシについて影響0ということは、アルゼンチンのトウモロコシ作物に対する殺虫剤使用は長年にわたって無視可能なほどわずかであることに由来する。

温室効果ガス排出に対する影響


方法:
GM作物由来のGHG排出量の削減は、2つ主要な理由に由来します(環境保全技術情報センター:Conservation Technology Information Center, 2002; Fabrizzi, Moronc, & Garcia, 2003; Jasa, 2002; Lazarus & Selley, 2005; Reicosky, 1995; Robertson, Paul, & Harwood, 2000; West & Post, 2002)。まず第1に、GM作物は除草剤や殺虫剤の散布回数の減少による燃料使用の節減と、土壌耕作におけるエネルギー使用の削減に貢献します。Lazarusと Selleyは、噴霧散布1回につき二酸化炭素の排出量が2.7kg/ha減ると報告しています(2005)。この解析では、私たちはGMIR作物だけで噴霧散布回数が減り、究極的にGHG排出量が減少するという控え目な仮定を使用しました。私たちが使用した耕作システムの変化の結果から生じる省燃料はカーボン・ニュートラル(http://www.carbonneutral.com.au)からダウンロードできます。この情報源では、長年の従来型耕作法と比較すると不耕起(NT)農法の採択によって耕作関連の燃料使用が36.6L/ha減少し、さらに(平均で)チゼル鋤/ディスク耕うん作業と比較しても耕作燃料の使用量が16.7L/ha減少すると述べられています。これは結果的にそれぞれ二酸化炭素の排出量を98.8kg/haならびに45.0kg/ha削減します。

第2に、不耕起農法の活用法と耕やす回数を減らす低耕起農法4の利用は、土壌中に貯蔵または隔離されている作物の残骸物の形態で有機炭素量を増加させます。この炭素隔離は、二酸化炭素の環境中への排出も低下させます。炭素隔離の割合は、通常の耕うん作業と低耕起作業を用いた作付方式にについて算出しました。すなわち、炭素隔離にGM作物が与える影響の程度と最終的に大気中への二酸化炭素の排出への影響の程度を私たちの分析に取り込みました。もちろん、隔離される炭素量は、土壌タイプ、作付方式、地域生態によって異なります。北米では気候変動に関する国際的パネルが、不耕起農法システムは炭素300kg/ha-1年貯蔵し、低耕起システムは炭素100kg/ha-1年貯蔵し、そして保全型耕作システム耕は炭素100kg/ha-1年の損失になると推定しています。下記に示す分析では、一部の諸国では不耕起ならびに低耕起のデータを合計しているという事実を勘案するために、すべての不耕起農法と低耕起農法に炭素100kg/ha-1年の保全的貯蔵を適用しました。

隔離される1kgの炭素は、二酸化炭素3.67kgに相当します。これらの仮定は、農業所得についての文献レビューに由来するGMIR作物と不耕起/低耕起作業を行っているGMHT作物の地域についての農薬噴霧散布の減少に関するデータに適用されました(北米および南米のGMHT大豆作物とカナダのGMHTナタネ作物に限定5)。

(表8)は1996-2004年の間のGM作物の栽培と関連したGHG排出への影響をまとめたものです。2004年では、GM作物と関連した燃料使用削減に由来する恒久的二酸化炭素貯蓄は10億kgでした。これは1年間に道路上から自動車を48万台撤去した場合と同等です。

4:不耕起農法とは、畑地をまったく耕されないことを意味します。また低耕起農法とは、それが伝統的な耕運システムで行っていたよりは畑地の手入れをしないことを意味します。たとえば、不耕起農法のもとでは大豆の種子を、それ以前に植えた作物、例えばトウモロコシ、ワタ、コムギが有機物として残っている状態のままでで播種します。
5:GMHTトウモロコシならびにワタ作物(さらに米国のGM HTカノーラ作物)に関しては、影響が小規模と思われること、また/もしくは耕作に関するデータが個別に存在しなかったために、これらの作物のGHG排出削減可能性についての分析は、今回の分析調査には含めませんでした。

表8.2004年の炭素隔離の影響に対するGM作物の影響 (自動車相当量)

作物/形質/国 燃料使用量の節減に起因するCO2の削減量
(CO2100万kg )
1年間路上からファミリーカーを撤去した場合の燃料の節減に等しいCO2の削減 土壌の炭素隔離に起因するCO2の削減
(CO2100万kg )
1年間路上からファミリーカーを撤去した場合に等しい土壌の炭素隔離に由来するCO2の削減
米国:GM HT 大豆 322 142,889 3,762 1,672,178
アルゼンチン:
GM HT 大豆
532 236,444 4,186 1,860,400
他国:
GM HT 大豆
73 32,444 569 252,889
カナダ:
GM HTカノーラ
94 41,778 906 402,800
Global
GM IR ワタ
61 27,111 0 0
合計 1,082 480,666 9,423 4,188,267

GM作物の利用による低耕起作業から生じたさらなる土壌の炭素隔離増加によって2004年では二酸化炭素の排出削減は94億kgに達しました。これは1年間路上の自動車をほぼ470万台減らしたことに相当します(英国の全登録車の19%と等しい)。

結語

この調査では、1996―2004年の間の、農業所得、農薬使用と温室効果ガス排出に対するGM技術の世界規模での累積的な影響を数値化しました。ほ場レベルで相当な経済的利益があり、そして累計で270億ドルに達したことをこの分析は示しています。またGM技術は、栽培者の農薬使用量を1億7200万kg削減し、さらに農薬使用と関連するエコロジカル・フットプリントの14%縮小という結果ももたらしました。またGM作物は、温室効果ガスの排出量を100億kg以上減らすという貢献もしましたが、これは1年間道路から500万台の自動車を撤去することに相当します。

しかし特定される影響は、影響の主要3分野の各々について推定するのに用いられた方法の限界や、関連データの入手に関する限界を反映して、たぶんに控えめであると思われます。そこで今後の調査では、分析が一層役立つようにダイナミックな経済影響のより高度な検討と、比較的目にみえにくい経済影響(例えば、省力化に関して)を取り入れる方向に拡大されていくかもしれません。また環境影響のさらなる分析には、土壌侵食への影響のような環境指標の追加も有効かもしれません。


報告書の原文(英文)[PDF 242KB]
GM Crops: The Global Economic and Environmental Impact-The First Nine Years 1996-2004

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